WORD 02 サーカディアンリズム
サーカディアンリズムとは
人はある時間になると自然と眠くなり、ある時間になると自然と目が覚めます。また一定の間隔で空腹感を感じ、一定の周期で月経がやってきます。このように人が生まれながらにしてもっている身体リズムは「体内時計」と呼ばれています。そのなかで24時間周期のものは「サーカディアンリズム」、日本語で「概日リズム」と呼ばれます。「サーカ」「ディアン」はともにラテン語で、前者が「おおよそ」、後者が「1日」を意味し、「おおよそ1日のリズム」のことを指します。
同調因子で24時間にリセットする
「おおよそ1日のリズム」といっても、サーカディアンリズムで重要なのは、あくまでも「おおよそ」であり、正確に24時間ではない点です。サーカディアンリズムは動物にもあるとされていますが、人の場合は24時間ではなく25時間の周期になっているといわれています。ふつうに生活していたら毎日1時間ずつずれていくはずですが、私たちは毎日決まった時間に起きることができ、決まった時間に眠りにつくことができます。なぜこうしたことが可能なのでしょうか。
それは、「同調因子」と呼ばれるものが、25時間を24時間サイクルに調節してくれるからです。同調因子はいくつかあり、代表的なものに「太陽や人工的な光」「時計など時間がわかるもの」「食事」「運動」「通勤・通学などの習慣」などがあります。これらによって、25時間のリズムが24時間へとリセットされることで、私たちは日々規則的な生活を送ることができるのです。
この同調因子がないと24時間にリセットされないため、起床時間が毎日1時間ずつ遅れるといったことが起こります。
サーカディアンリズムが乱れて起こる障害
サーカディアンリズムが乱れると、睡眠のリズムに障害が出る「概日リズム睡眠障害」という状態になることがあります。
障害はいくつかのタイプに分かれます。一つは中高生など若者に多い「睡眠相後退症候群」です。夜更かしや徹夜を続けていると朝起きることが難しくなり、遅刻や欠席が多くなります。一方、高齢者に多く見られるのが「睡眠相前進症候群」です。睡眠相後退症候群とは逆のパターンで、夕方など極端に早い時間帯に眠気を感じて夜中に目が覚めてしまうというものです。また、時差の大きい海外旅行などから戻ると海外の時間に慣れてしまい、睡眠サイクルが元に戻りにくくなる「時差症候群」、いわゆる時差ボケも起こります。
さらに、看護師などの日勤と夜勤、宿直などがある仕事の場合は「交代勤務障害」になることがあり、勤務中に強い眠気に襲われたり、逆に寝るべき時間に寝つけないなどの症状が出ます。
主な概日リズム睡眠障害
障害名 | 起きやすい人 | 症状 |
---|---|---|
睡眠相後退症候群 | 中高生 | 夜更かしなどで朝起きるのが難しくなり、朝寝坊などが多くなる |
睡眠相前進症候群 | 高齢者 | 夕方など極端に早い時間帯に眠気を感じて夜中に目が覚める |
交代勤務障害 | 交代勤務者 | 勤務中に強い眠気に襲われたり、逆に寝るべき時間に寝つけないなどの症状が出る |
時差障害 | 海外渡航者 | 海外の時間に慣れてしまい、睡眠サイクルが元に戻りにくくなる |
不規則型睡眠覚醒パターン | 脳に障害がある場合、長期療養者 | まとまった睡眠がとれず、1日に不規則に複数回睡眠をとる |
非24時間睡眠覚醒症候群 | 視覚障害者、男性、若者 | 入眠と起床時間が毎日30分~1時間ずつずれていく |
概日リズム睡眠障害の治療法
このような概日リズム睡眠障害の治療に必要なことは1日のリズムを24時間にリセットしてあげること。そのために有効なのは光。太陽の光はもちろん、高照度の人工光を浴びることで1日のリズムを24時間にリセットできる可能性が高くなります。また、人は睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンが分泌されることで眠くなるため、メラトニンを経口摂取することで睡眠時間を調整する方法もあります。
更新日:2017年10月10日(火)